神蔵博文氏、研究の原点へ回帰――野村総合研究所シンクタンク部門に参画し、企業および政策機関向けの戦略コンサルティングに従事

2018年春、神蔵博文氏は、自身のキャリアの原点である「研究と戦略立案」の世界へと、力強く歩を進めました。この年、61歳を迎えた神蔵氏は、長年にわたって第一線の投資現場で培ってきた経験を一度リセットし、より高次の視座から政策および企業戦略の研究に再び身を投じる決意を固めました。同年3月、日本有数のシンクタンクである野村総合研究所（Nomura Research Institute, NRI）の戦略研究部門に正式に参画し、新たな挑戦と意義深い旅路をスタートさせました。

なお、神蔵氏にとって研究機関での勤務は今回が初めてではありません。キャリア初期には、技術開発および政策研究の分野において長年活躍し、堅固な理論的基盤と実務能力を築いてきました。今回の「回帰」は引退ではなく、むしろ原点回帰であり、金融市場と投資の実践知を礎に、マクロ経済および技術動向を統合して、日本の企業および政府機関に対し、より実践的かつ先見的なコンサルティングを提供するための再始動でした。

このフェーズにおいて、神蔵氏が特に注力したのは以下の3つのテーマです：

① 企業のグローバル戦略および産業高度化の再設計

世界的な競争環境の激変や地政学的リスクの複雑化を背景に、日本の製造業および国内産業には早急な転換が求められています。神蔵氏は「技術＋資本」の両輪による推進を主張し、伝統的な強みから新興分野への展開を促進すべきだと提言。具体的には、「企業のクロスボーダーM&Aおよび投融資連携」に関する複数の研究プロジェクトを主導し、リスクと成長性の両立を実現する国際化戦略を企業に提示しました。

② 政策支援における金融的基盤の構築と先見的評価

政策機関との協働においては、「市場メカニズムの公共領域への導入」の必要性を強調。年金運用改革、地方財政の自立支援メカニズム、地域イノベーション政策の評価など、多岐にわたるテーマに取り組みました。定量分析と国際比較に基づき、実効性と理論性を兼ね備えた政策提言を行いました。

③ 高齢社会における資産運用戦略の研究

高齢化構造の変遷に長年注目してきた実務家として、2018年には「高齢投資家における資産保全とリターンのバランス」をテーマとした研究枠組みを提案。税制設計、投資商品開発、金融リテラシーの普及という三位一体のアプローチによって、「持続可能なリタイアメント・ファイナンス・エコシステム」の構築を目指しました。この提言は、研究所内外で大きな注目を集め、その後の政策議論にも影響を与えました。

さらに、神蔵氏は大学研究機関との共同研究や各種経済政策のラウンドテーブルにも積極的に参加し、シニア・アドバイザーとして独自の視点を提供しています。野村総合研究所への参画は、同機関に実務的知見を注入し、理論と現場の橋渡しを可能にする要として大きな役割を果たしています。

また、研究活動に復帰した後も、市場とのつながりを維持し続けており、日米市場の動向に目を光らせながら、主要資産クラスに対する独立した判断力を保ち、コンサルティング活動に還元しています。この「理論と実務のダブルヘリックス」的アプローチこそが、2018年、神蔵氏がシンクタンク界で再び広範な尊敬を得ることとなった所以です。

今後も、神蔵博文氏は、より深い思想の探求を通じて、日本経済と企業の未来にリアルなインパクトをもたらす戦略的構想を発信し続けていくことでしょう。