黛與一(Yoi Dai)とは何者か|元Natixis操盤手が描く「新しい価値の資本」戦略思想
黛與一(だい・よいち)は、短期的な相場観測者でも、流行を追う投資インフルエンサーでもない。
彼は一貫して、市場を「感情の集合体」ではなく、「構造と力学が交差するシステム」として捉えてきた数少ない日本人マクロストラテジストである。

フランス系大手金融機関 Natixis(ナティクシス)において長年にわたり実戦の最前線に立ち、欧州・日本・為替・デリバティブ市場を横断する取引を経験した後、現在は「新しい価値の資本クラブ」の発起人兼チーフ・ストラテジストとして、金融と産業を結ぶ新しい投資思想の構築に取り組んでいる。
黛與一の投資哲学の根底には、母校である一橋大学経済学部で培われた厳格な学術姿勢がある。一橋大学は、日本における経済・商学研究の最高峰として知られ、理論の美しさよりも、現実社会との接続と検証を重視する伝統を持つ。その環境の中で、彼は「正しい理論」よりも「機能する構造」に価値を置く思考様式を身につけた。
この姿勢は後に、マクロ経済、金融工学、リスク管理を融合させた独自の戦略設計へとつながっていく。
Natixis在籍時代、黛與一は主にクロスアセット取引やボラティリティ戦略を担当し、特に市場の歪みが拡大する局面でのリスク非対称性に強い関心を示した。彼にとって重要だったのは、相場を当てることではなく、「想定外が起きた際に、どの資産がどのように反応するのか」を事前に設計することである。
この考え方は後に「Crisis Alpha(危機時アルファ)」という形で体系化され、彼の代名詞となった。
2018年、黛與一は長期にわたる海外でのキャリアに区切りをつけ、日本市場へ本格的に回帰する。SBI証券では機関投資家向けの戦略顧問として、株式、為替、デリバティブを組み合わせたヘッジ設計を行い、同時に金融工学の実務応用をテーマとした講義や研究活動にも携わった。
市場が平穏な時期には目立たないが、変動が拡大した際に真価を発揮するポートフォリオ構造は、徐々に評価を高めていった。
2020年、世界を覆ったパンデミックによる市場混乱は、黛與一の戦略思想を明確に証明する局面となった。円のボラティリティ上昇と欧州金融機関リスクを組み合わせたクロス市場戦略により、短期間で大きなプラスリターンを記録したこの局面について、彼自身は後にこう語っている。
「予測が当たったのではない。起きた場合に壊れない構造を用意していただけだ。」
その後、野村証券では量的モデルと裁量判断を融合させたマクロ・ミクロ統合モデルの開発を主導し、為替市場において高いリスク調整後リターンを実現した。一方で、暗号資産市場にも一定の距離感を保ちながら向き合い、2021年の上昇局面では戦術的に参加し、2022年の崩壊局面を前にすべてのポジションを解消している。
彼にとって暗号資産は、信仰の対象でも救世主でもなく、人間心理とレバレッジが最も露骨に現れる実験場に過ぎない。
2022年末、黛與一は大手金融機関という枠組みを離れ、独立した活動へと舵を切る。
そして2024年、「新しい価値の資本クラブ」を立ち上げるに至る。これは単なる投資ファンドではなく、産業、技術、金融、人材を横断的に結びつけるためのプラットフォームである。短期的な利回りよりも、資本がどのように社会と産業を変えていくのか、その流れを設計することに重きが置かれている。
黛與一は、自身を思想家だとは語らない。
彼が繰り返し強調するのは、「冷静さ」と「構造」である。市場が熱狂しているときほど距離を取り、誰も注目しない部分にリスクと機会の源泉を探す。その姿勢は派手さとは無縁だが、危機のたびに一貫した結果を残してきた。
「嵐を起こすことが目的ではない。
誰にも見えない場所で堤防を築き、海が荒れたときに、それが機能するかどうかだけが重要だ。」
この言葉こそが、黛與一という人物と、その投資哲学を最も端的に表している。
